音楽生成AIはどうやって音楽を生成している?
音楽生成AIは、大まかに以下のステップと技術で「学習」→「生成」を行っています。
1.データの準備・表現形式
- シンボリックデータ(MIDI)
- ノートのピッチ(音高)、長さ、ベロシティ(強弱)、タイミング情報などを数値化
- 楽譜データに近く、扱いやすいためまずはMIDIベースで学習するモデルが多い
- 波形データ(オーディオ)
- 実際の音声波形をそのまま扱う(サンプリング周波数で数値化)
- 高品質な「歌声」や「生ドラム」などを生成するには波形生成モデルが必要
2.モデルの種類と特徴
モデル種別 | 特徴・用途 | 代表例 |
---|---|---|
RNN系(LSTM, GRU) | 時系列データの連続性を扱いやすい。比較的軽量だが長期依存は苦手。 | Magenta’s Melody RNN |
VAE(Variational Autoencoder) | 潜在空間に圧縮してから復元するため、バリエーション生成に強み。 | MusicVAE |
Transformer系 | 自己注意機構(self-attention)で長期依存を学習。大規模データで威力を発揮。 | Music Transformer, OpenAI Jukebox |
GAN(Generative Adversarial Network) | 生成器と識別器の競合で高品質なサウンドを生成。学習が不安定になりやすい。 | WaveGAN |
Diffusionモデル | ノイズの付加・除去を繰り返して高解像度データを生成。近年急速に注目度上昇。 | Riffusion, AudioLDM |
3.生成の流れ(例:Transformer系モデルの場合
- トークン化(Tokenization)
- MIDIデータを「ノートON/OFF」「拍子」「テンポ変更」などのトークン列に変換
- 学習(Training)
- トークン列を時系列としてモデルに入力し、「次に来るトークン」を予測するタスクでパラメータを最適化
- 大量の楽曲データ(数千〜数万曲)で学習し、メロディや和音進行、リズムパターンを獲得
- 条件付け(Conditioning)
- 「ジャンル」「コード進行」「ムード」「歌詞」などを入力として受け取る
- プロンプトに応じて特定のスタイルや構成を反映
- サンプリング(Sampling)
- 学習済みモデルから、確率的に(あるいは温度パラメータで調整して)次のトークンを生成
- トークン列をデコードしてMIDIに戻し、DAWやシンセサイザーで演奏・波形化
- ポストプロセス
- エフェクト(リバーブ、EQなど)をかけたり、アレンジを手動で微調整して完成度を高める
4.波形レベルの生成(例:OpenAI Jukebox)
- VQ-VAE で波形を小さな「コードブック」に圧縮
- その潜在コード列をTransformerで生成
- デコードして高解像度のオーディオ波形を復元
- 最後にマスタリング処理を施して自然なサウンドに
5. 仕組みのポイントと今後の展望
- 長期構造の学習:TransformerやDiffusionモデルで「曲全体の起承転結」を捉える研究が進行中
- リアルタイム生成:低遅延化し、ライブ演奏で即時生成できる技術開発
- 人間との協調:ユーザーが生成パラメータを直感的に操作できるインターフェースの充実
- 歌声合成との融合:歌詞とメロディからAIが自動で歌唱パートまで生成する統合型モデル
音楽生成AIツール3選

以下の3つの音楽生成AIツールをピックアップしました。用途や予算に合わせて比較してみてください。
Suno AI(旧Bark)
- 概要:もともと音声生成に特化していた「Bark」が進化したもので、「歌詞」や「ムード」をテキストで入力すると、数秒でフルソングを生成します。
- 歴史:
- 2023年4月:オープンソースの音声・オーディオ生成モデル「Bark」をGitHub/Hugging Faceで公開 ウィキペディア
- 2023年12月20日:AI音楽生成ウェブアプリ「Suno」として正式ローンチ。合わせてMicrosoft Copilotプラグインを提供開始 ウィキペディア、Axios
- 2024年3月21日~5月30日:v3(2分までの楽曲生成)→ v3.5(4分まで生成)を続けて公開 ウィキペディア
- 2024年6月17日:シリーズBで1億2500万ドルを調達、約5億ドルの評価額に到達 Music Business Worldwideロイヤルティエクスチェンジ
- 2024年7月1日:iOS向けモバイルアプリをリリース ウィキペディア
- 2024年9月13日:有料ユーザー向けに「Covers(カバー曲生成)」機能の早期アクセスを開放 ウィキペディア
- 2024年11月~12月:v4公開&無料化、ユーザー数1200万超を達成 ロイヤルティエクスチェンジ
- 2025年5月2日:v4.5公開。⻑尺化(8分まで)やスタイル間のスムーズな移行機能を追加 ウィキペディア
- 主な特徴:
- テキスト(歌詞)からの自動作曲・歌唱対応
- 複数トラック、複数バージョンの生成オプション
- 料金モデル:
- 無料プランあり(試用可)
- 有料プラン:500曲生成で約10ドル~ Kripesh AdwaniAudioCipher
AIVA (Artificial Intelligence Virtual Artist)
- 概要:クラシックやシネマティック系など、スコアベースの高度な作曲に強みを持つAI。プロの作曲家や映像制作者向けに設計されており、MIDI/楽譜形式での出力が可能です。
- 歴史:
- 2016年2月:ルクセンブルクでPierre Barreauら4名がAiva Technologiesを創業 ウィキペディアウィキペディア
- 2016年6月:SACEM(仏著作権管理協会)に「作曲者」として公式登録(AIとして初) ウィキペディア
- 2016年11月:AIVA初のスタジオアルバム『Genesis』をリリース ウィキペディア
- 2018年:TEDトークで創業者Pierre BarreauがAIVAを紹介。同年セカンドアルバム『Among the Stars』発表 ウィキペディア
- 2019年1月:商用プロダクト「Music Engine」をローンチ(最大3分の短編作曲対応) ウィキペディア
- 以降:Rock、Pop、Jazz など250以上のスタイルや、DAW連携機能を順次拡充 aiva.ai
- 主な特徴:
- テンプレート(ジャンル)選択と細かなパラメータ調整
- DAW(Digital Audio Workstation)への直接エクスポート
- 業務利用を想定した商用ライセンスを完備
- 料金モデル:
- フリーミアム(基本無料+商用ライセンスは月額制) DigitalOcean
Soundraw
- 概要:クリックベースの直感的なUIで、ムードやテンポを選ぶだけでプロ品質のBGMトラックを自動生成。動画やゲーム、ポッドキャストのバックグラウンドミュージックとして特に人気です。
- 歴史:
- 2020年2月:ダンサー/起業家 Daigo Kusunoki(楠木大悟)氏らが東京で設立 The BridgeEquityZen
- 2022年7月:シリーズAで1.8億円(約140万ドル)を調達 The Bridgeスタートアップ用テンプレート合集
- 2024年3月13日:追加で300万ドルを調達し、さらなる技術開発と国際展開を加速 Record of the Day
- 以降:ムード・ジャンル・テンポを選ぶだけの直感UIでBGM生成、YouTubeやゲーム開発者を中心にユーザー急増
- 主な特徴:
- テキスト入力不要の「ムード×ジャンル」選択式プロンプト
- 生成後も細かなエディット(パートごとの長さ調整など)が可能
- ロイヤリティフリーの商用利用可
- 料金モデル:
- 月額サブスクリプション制(プランにより生成回数無制限) SOUNDRAW BlogOne Submit
まとめ:あなたのクリエイティビティを広げる音楽生成AI
本記事では、2025年最新版の代表的な音楽生成AIツールとして Suno AI、AIVA、Soundraw の3つを比較・紹介しました。
- Suno AI はテキストからの歌唱生成やカバー曲制作に特化し、直感的に“歌もの”を作りたい方に最適。
- AIVA はクラシックやシネマティックといったスコアベースの高度な作曲を求めるプロフェッショナルに支持される一本。
- Soundraw はムードとジャンルを選ぶだけでロイヤリティフリーのBGMを量産でき、動画制作者やゲーム開発者に強くおすすめです。
それぞれのツールは、
- 用途・ジャンル
- 操作性
- ライセンス/コスト
- 生成クオリティ
という観点で特徴が大きく異なります。まずは無料プランやトライアルで試し、自分のプロジェクトに合った最適なAIを見つけてみてください。
今後、AI技術の進化に伴い「長尺楽曲」「リアルタイム生成」「歌声合成」の分野でもさらなるブレイクスルーが期待されます。この記事が、あなたの音楽制作における新たな可能性の扉を開く一助になれば幸いです。
ぜひ次は、実際に手を動かしながらAIが生むサウンドを体験し、あなた独自のクリエイティブを加速させてください!
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